「何の話してんだよ」
俺たちに仕事やらせといて。
とは(喉まででかかったが)言わないけれど。
「え?あぁ、お帰りなさい丸井くん、仁王くん」
「あーっ!いいところに!先輩たちもやりましょうよ、怪談!」
「はぁ?」
いつまでも埃くさいものを持っていたくはないと言わんばかりに、どすんと資料をテーブルに置く。それが更にほこりを舞い上げる結果になったのだが、まぁ換気をすればどうにでもなると思い、いそいそと壁時計を確認する。
(6時20分・・・)
怪談をするには些か明るすぎやしないだろうか。ちらりと窓の外を見てもまだ日は高い。その仕草がまるで怖がっているようにでも見えたのか、幸村はにやりと笑った。
「こーわいんだー丸井」
「なっ!ちっげぇよ。どうせ怪談やるならもっと暗い方が雰囲気出・・・」
「いや」
必死に抗議する丸井の言葉を珍しくもジャッカルがさえぎった。その顔は心なしか何処か青い気がする。
「柳の話に、時間は関係ねぇぜ・・・?」
「ほう。面白そうやのう」
どうやら仁王は参加決定のようだ。切原と柳生の間に腰を下ろすと、ほれ、と隣の床をぺちぺち叩いた。
(そこに座れってか)
文句一つ言わせず、要は強制参加らしい。
丸井の左隣から、仁王、柳生、真田、柳、幸村、ジャッカル、切原と並ぶ。柳の真向かいの位置になってしまった丸井は仁王をギロッと睨みつける。
「お前、図ったろ」
「はて。何のことだか」
憎たらしい笑みを浮かべて、余裕綽々である。柳は一つコホンと咳をしてうっすらと口元に笑みを湛えると。
「この学校にまつわる、七不思議は知っているか?」
その瞬間。言い知れぬ不安に丸井は襲われた。それは丸井だけではなかったらしく、左隣に座る仁王もまた。先ほどまでの余裕の表情は無くなった。
理由など、ない。
無いが。
なぜか、嫌な予感がして仕方ないのだ。
「いくつかは知ってますけど・・・全部は・・・」
「あぁ、俺も全部は知らないな。俺が知ってるのは・・・4つかな」
「私は5つですね」
口々に知っている数を上げる。丸井と仁王は目を合わせ、苦笑する。どうやら、この場の空気に違和感を抱いているのは自分たち二人だけのようだ。
「じゃあまず一つ目から、行こうか」
この二人の予感が、間違ってはいなかったと。気づく頃にはもう遅いのに・・・・・。
[ update 07.07.17 ]
next