星に願いを君に愛を

 

「真田のうちに笹ってある?」


 幸村が割と真面目な顔して首を僅かに傾けて、けれど腕を組みながら見上げてくるものだから真田はどうしようかと本気で迷った。
 何を迷うかといえば、今この発言についてつっこむべきか、はたまた真面目に質問に返すかどうするかだ。

 幸村は仁王立ちして部員の前に立っている。その右隣には当然のように柳がいて、逆サイドには真田がいる。
 立海3強とはその部員たちの前に立つ3人のことであり、立海の中心をなす存在であり、部長、副部長、会計(はぶっちゃけ肩書きだけで実務は参謀だが)という重要な役割を果たす3人である。

 その中の、一番重要な役割を果たしているはずの男は、今、なんと言った?

 真田は呼吸をすることも忘れてまじまじと幸村を見つめた。

「やだな、真田。そんなに見つめられたら俺に穴が開いちゃうよ」
「そ、そうか、すまん。 それは困るな」

 咄嗟に謝ると幸村の向こうで柳がため息をついた。そして心底哀れむような目で真田を一瞥し、ふ、と口元に笑みを浮かべた。いわゆる、人を小ばかにする笑みだ。

 だがそんなもの真田に見えてはいない。幸村を見すぎたなら穴が開くといわれたので今はもう自分の足元を見つめている。

 笹ってある?

 幸村は確かにそういった。
 ないわけではない。だがあるとも言えぬほど小さな笹だ。

 しかし今ここで話題にする話ではない。なんせ、今はミーティング中なのだから。

「幸村くん、とりあえず連絡事項だけ先に言って関係ないやつは帰らせてよ」
「あ、お前関係ないとか言うけどな、今日が何の日か知らないのか?」
「今日?」
「七夕っすよね!」

 ぷぅとガムを膨らませながら頭の後ろで手を組んで丸井がそう言えば、隣に胡坐をかいて座っていた赤也は元気よく挙手して答えた。

「そう。赤也はおりこうさんだな」
「えへへ」

 適当にかわされたというのに赤也は照れくさそうに鼻の下を人差し指でこすって笑った。それを柳生が心底可愛そうな子を見る目で見つめる隣で、仁王はそんな二人意にも介さず幸村に向かって「はいぶちょー」と挙手をした。

「どうした仁王」
「とりあえず被害者はレギュラーだけで十分だと思うので他の部員は帰してやったらどうじゃろ」
「…それについては賛成だな。どうだ精市、どうせ今から笹を用意したところで今日は七夕当日だ。願い事を書いたとしても明日の朝には撤収だ」
「んーまぁそれもそっか」

 なによりこれ以上部長の権威が落ちても困る。部長は手の届かない存在であり、それを取り巻くレギュラーは格が違うと思わせてこそ部全体の士気も上がる。つまるところこれ以上頭の弱いところを見せるな、とまでは優しい柳は口にしないが、とりあえず未だ足元しか見つめぬ真田の愚かっぷりは7月7日を以って部員全員が悟ったことだろうとげんなりした。
 別に真田の格が落ちようが威厳がなくなろうがたいしたことはない。なんだかんだでつるむ自分まで同類に見られたら迷惑極まりないだけだ。

「わかった。じゃあ今日はこれで解散。レギュラーは部室に移動してミーティング続行ね」
「え、続けるんですか?」
「うん。一人一個をお星様にお願い事しよう」
「短冊も笹もねぇけど?」
「それはコスト削減だよ。どう?地球に優しいでしょ、俺」
「あぁ、うん、そうだな。さすが幸村」

 ジャッカルがにこりと笑ってそう切り替えしたので幸村は満足げにふふ、と笑うと何故か真田にジャッカルがにらまれた。まぁ今更だけどなと懐の広さを発揮したジャッカルは仕方なしに立ち上がって部室へ足を運ぶ。勿論、丸井と赤也の背を押しながら。

 

Fin.
中途半端ですが続きません。