君に届け、僕の想い
相当好きなのかもしれない。
これまで、自覚はなかったけど。
「あ、部長!」
あからさまにへらっと笑って手を振ってくる可愛い後輩。
猫みたいに気紛れなくせに犬のように寄ってくる。
結局は動物っぽいのだけど、でもそんな感じ。
「ちゃんと練習しろよ。蓮二にチクるぞ」
「げっそれだけは勘弁して下さいよ!」
本気で困っているのが分かるくらい、赤也は感情を隠さない。
それは喜びであったり、悲しみであったり。はたまた負の感情であったりするので時に困ることもあるのだが。基本的には見ていて飽きないし、楽しい。
「あ、ねぇ部長。今日暇っスか?」
「今日?あぁ、特に用はないけど・・・」
「じゃあ空けといて下さいね、寄り道して帰りましょう」
「俺が赤也と帰ることは決定事項なのか」
「そっス」
じゃあ、俺練習戻るんで。
そういってコートに戻る背中を見ながら考える。
――――
精市は赤也には甘いな。
いつだったか蓮二が言っていた言葉を思い出す。確かにそうかもしれない。引退して尚、こうして部活に顔を出すのは元部長だからだということもあるけど。
やっぱり元気で生意気な、可愛い後輩を見に来ているのだ。
それは部活をしていた頃と代わらないほど毎日のように立ち寄り、会話をする。今日のように一緒に帰る日もあれば、そうでない日もあるのだけど。
アイツは、俺を好きだという。前までは「はいはい」と受け流していたのだけど。どうやら、俺は絆されたらしい。
―――― 夢にまで、見てしまったのだから。
夢で赤也はやっぱり俺を好きだといった。ハッキリと覚えているのだから、もしかしたらただの妄想だったのかもしれない。こうであってほしい、と。だけど。
コートで忙しく後輩に、仲間に指示を与える赤也を見る。成長したものだ。初めは俺にコテンパンに負けて、泣いてばかりだったのに。
元部長としての俺から見れば、非常に嬉しいことなのだけど。
一個人、幸村精市として見るならば。頼ってくれないのは、ちょっとだけ寂しい。今まで煩いくらいまとわりついていたのだから当然といえば当然だけど。でも、たぶん。何処か違う感情が生まれている。
部活が終わるまで、あと20分くらいだろうか。風が少し冷たくなってきた。現役の頃は周りの景色なんて見る余裕もなくひたすらボールだけを追っていたけれど。
きっと、部活をやめていきなり色んなものが見えてきた。それだけのことなんだろう。季節の移り変わりとか、風の冷たさとか。赤也に対する、俺の気持ちも。
好きだといわれて純粋に嬉しかったのだから、ただ見えていなかっただけ。俺の気持ちは、前から何一つ。
だけど年上の威厳というものは勿論俺にもあるわけで。
相当好きなのかもしれない。だけど、まだ秘密にしておこう。