「ちょっとアンタ何してんスか」
目の前に、正確には目下に転がる一つ上の先輩を、見下ろす。
「んー・・・?見てわかんない?」
頬にかかる自分の髪がくすぐったいのか、その人は身を捩ってひとつ笑うと。
「あかやも一緒にやる?」
ひなたぼっこ、楽しいよ。
そういって、半ば強引に俺の手を引っ張る。
勿論体制が崩れた俺は床にダイブすることになるわけで、床に楽しげに転がる幸村部長に当たらない様にと一応は注意してなされるがまま、床に肘を打つ羽目になった。
「いってぇー・・・」
「あはは」
「笑い事じゃないっス。マジで痛いんですよ」
「じゃあ蓮二に受身の練習も取り入れてもらわないとな」
冗談じゃないことを笑顔で抜かしながら幸村部長は未だ床に転がっている。余程ひなたぼっこが気に入ったのだろう。ごろごろと右に左に転がっては俺を邪魔扱いして楽しんでいる。
こういうとこ、子供だと思う。
俺なんかよりずっと。
楽しいことに目がなくて、楽しいと思ったことはなりふり構わず没頭して。
まぁ基本的に見た目なんか何にも気にしてないんだけどさ、この人。
「ぶちょー・・・」
「俺は部長じゃありません」
「いや、部長になったばっかじゃないっスか」
「えー」
「えーじゃないっス」
中学でも部長を務め、そして高校でもやはり部長になったこの人。普段からこんなんで、部活中も大して変わらないのに部を収める立場にあるのは、柳先輩の支えと真田副部長の凄み、そして何よりこの人の性格の所為だと思う。
先輩相手だろうがなんだろうが邪魔になる相手に対して結構に手厳しい。テニスの実力があるのは認めるが、そこまでしていいのかと思うこともある。というのは内緒だけど。
そんな鬼将軍のこの人が、まさか久々の休日を使って人の家、それも後輩の家に転がり込んでまでひなたぼっこをしていると知ったなら周りの反応は変わるだろうか。
「大体、俺部長とか先輩とか敬われるの嫌いなんだよ」
むくっと起き上がって、大分前に持ってきていたお茶に手を伸ばす。
頭がぼさぼさなのに何処かさまになるのは、生まれ持った資質だろうか。
「マジっスか?じゃあ俺もため口オッケー?」
「赤也は駄目。お前にため口とか使われたら腹が立つ」
「言ってることむちゃくちゃだ!」
「だって相手がお前だし」
さらりと。
さらりとなんでもない風に言いのけてけろっとしながら茶をすするこの人は。
どこまで俺を揺さぶったら気が済むだろう。
―――
だって相手がお前だし。
それは暗にお前は特別だと。
そう理解してもいいのだろうか。
「・・・何笑ってんのあかや」
ばりばりとせんべいをかじるこの人は。
どこまでも気取らなくてどこまでも愛しくて。
「べつに、なんでもないです」
まるで春の風のように。
きらきらと、俺の周りでそよいでいる。
Fin.
自主的課題様よりお題拝借。(閉鎖されました)